また長らく間隔が空いてしまいましたが、久しぶりに更新したいと思います。
今回は、先週末の6月11日(土)に実施した猪苗代巡検について報告します。
福島県の中央部に位置する猪苗代湖は本研究室でも調査対象水域となっており、湖底で採取されたボーリングコア試料の分析が行われていますが、今回野外調査を行ったのは猪苗代湖ではなく、その北東部を流れる酸川流域です。
酸川(左写真手前)は、猪苗代湖の北東部を流れ、下流で長瀬川と合流して猪苗代湖に流れ込みます。
上流で安達太良山(左写真奥)から流れてくる硫黄川という非常に酸性の強い川と合流しているため、川の水は強い酸性を示します。
この流域では安達太良山起源のラハール堆積物(火山泥流)の露頭が多く見られ、過去に繰り返し大規模なラハールが発生してこの流域に流れ込んだことが福島大学をはじめとした過去の研究からわかっています。
上流の道のはずれから草が生い茂る森の中へと分け入り、川沿いの岩場を下流へと下っていくと、川の浸食によって削られて断面の露出したラハール堆積物の露頭が見えてきます。
この露頭では、過去数千年間で発生した大規模なラハールの堆積物が6層見られます。
特に厚く堆積した層では、大きな樹木や礫が含まれていました(左写真の露頭上部)。
大きな礫や樹木を押し流すほどの大規模なラハール。想像しただけで恐ろしくなります。
また、酸川の流域では川から流れてきたとは思えないような巨大な礫(左写真)があちこちに見られました。
右下に見える黄色いリュックサックと比べてもその巨大さがわかると思います。
おそらくは過去のラハールによって流されてきたものなのでしょう。
今回の巡検で見てきたものについて簡単に紹介しましたが、ここまで読んでこの調査が湖の堆積物の研究と何の関係があるのかと疑問に思われた方もいると思います。
実は、冒頭で述べた猪苗代湖のボーリングコア試料中には何層ものイベント層が見られます。今回の調査では、そのイベント層と陸上の地質記録との関係を調べるための試料の採取が主な目的でした。
もしかしたら、過去の大規模な自然現象の痕跡が猪苗代湖の湖底堆積物中に記録されているのかもしれません。そのあたりは、今後福島大学のグループの研究が進んでいけば明らかになってくると思います。
今回のような山の中を分け入っての調査というのは、湖を主なフィールドとする私たちにとっては不慣れなことで大変でしたが、貴重な経験になったと思います。
最後に、露頭の案内をしてくださった福島大学の長橋先生、本当にどうもありがとうございました。
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